肩甲骨が剥がれない

Twitterの補完版として始めたけれど、自分の備忘録状態。なるべく他人に読んでもらうつもりで書きます。

2024/9/3 本感想

柚木麻子「とりあえずお湯わかせ」

2019年〜2022年に連載されていたエッセイ。各話と章の文末に、刊行時の柚木さんが一言コメントを寄せていて、それがDPZの記事裏話やオモコロの振り返り記事を読んでいるような面白さ。点と点が繋がる感覚。ワンオペ育児とコロナ禍を迎えた柚木さんの心情や行動が軽快な筆致で綴られていて、爽快。らんたんの執筆時期とかぶっているからか、女性のエンパワメントや権利、政治ついて考えて、現在できることで行動している姿に圧倒された。本人もらんたんの資料を読んでいるからこそ、敏感になれたみたいなことを書いていて、なるべくしてなった、というか。過去の行動、人生の選択が現在の結果となっているのだなあ。あと、多分お子さんが生まれる前に大阪に夫婦で住んでいたような描写があって、少し嬉しくなった。

 

ただ、女性の立場や政治を考えたり思考するのってめちゃくちゃ豊かな人ができる特権だなとも考えた。余裕がないとできませんよ。柚木さんは余裕がない書き方をしているけれど、そもそも東京出身で女子高出身の津田塾大学仏文科卒業って。ブルジョワですよインテリです。こっちはもんぺを履いて自分の脳内を整理することで手一杯なのに。

 

デイリーによくある、インテリ層が己の感情ほとばしるままに、しかし上品さも失わずに書いた文章がとても心地よくてずんずん読み進めた。

この、感情のほとばしるまま、というところがミソで、彼らは愚かなふりをして記事を書いているんだよ、と言いたい。先日のニュースオモコロウォッチで永田さんも苦言を呈していたけれど、彼らは本当はとてつもなくクレバーなんです。それをわざと、下々の我々のところまで降りてきてくださっているんだから。自分たちと同レベル、もしくは下だと勘違いして、あちゃー気づいてしまった〜〜教えてあげないと!!と指摘()するのは、野暮というより、とてつもなく世間知らずな人もいるもんだなぁ…。それをわざわざラジオで取り上げるとは。今後の危機管理をきちんとしているな。と改めてBHBの舵取りの良さに感心した。だから今、空前のバブルなんだよね。この風船が弾けるところまで見届けるぞ。

 

 

しかし読み進めていくと、オールノットに関係する要素も出てきて、(登場する不眠症の元富豪の一族は柚木さんと母、祖母がモデルだろうし、試食販売の光景がとても現実味があったのも頷ける)まるで柚木作品のコメンタリーを読んでいるような、お得な気持ちになった。

 

 

 

貴志祐介「狐火の家」

柚木さんのエッセイを読んだあとに読むと、青砥純子の、一昔前も二昔前の前の女性描写にげんなりする。

美人(自称もするし他人からの評価も)弁護士が現役泥棒とタッグを組んで密室殺人を解き明かすも、毎回とんちんかんな推理を働かせる一方、泥棒は鮮やかに真相にたどり着く。という様式美がキッツ〜〜〜〜〜〜。20年前、いや、10年前なら受け入れられただろうけれど、2024年現在、エンタメだと分かっていても読み進めるのがしんどかった。ワトソンをわざと愚鈍に描く初期の実写版ホームズを思い出した。

蜘蛛の話はおぞましさがちょうどよくて面白かったです。

 

 

 

デイリーでも、オモコロでも、記事を読んだ後に、ライターのツイッターやブログや、編集者たちによる解説や、時には本人による解説を読むと、より内容が深まるというか。お得に感じられて2倍も3倍も楽しい。映像作品によくあるオーディオコメンタリーが好きなのも同じ理由です。

 

 

今、少年の名はジルベール、と一度きりの大泉の話。という、24年組のたった2 年間だけ行われた同居生活について語った竹宮惠子サイド、萩尾望都サイドのエッセイを読んでいる。

もーさまの肩を持ちたいけれど、きちんとしたことを知っていったいなにが起こったのか。2人の視点から知りたい。しかし、しょっぱなからもーさまという愛称が竹宮惠子と増山紀恵由来と知って複雑。