肩甲骨が剥がれない

Twitterの補完版として始めたけれど、自分の備忘録状態。なるべく他人に読んでもらうつもりで書きます。

2024/5/6 本っておもしろい。

今読んでいる本で思わぬネタバレをくらった(ネガティブな内容ではない)

ダウントン・アビー2公開時によく予告で流れていたこの映画。

moviewalker.jp

夢見るワーキングクラスの中年女性が一生懸命お金をためてパリで夢のディオールオートクチュールのドレスを作ってもらう映画。パディントンのような温かみのある登場人物とハートフルな映画なんだろうなといつか見たいリストに入れていた。

 

 

さて、私は19世紀〜20世紀初頭のイギリス文化や作品が好きで、ダウントン・アビーはもろにドンピシャなコンテンツなのでドハマリした。

ドラマが終わってもダウントン・アビーエイジな作品や文章を見つけては読みふけり、ダウントン・アビーの世界観を補強したり、彼らの思考や生活に少しでも共感できるよう、脳内で妄想に励んでいる。ここ数年のライフワークの一つとして、英国アッパークラス、ミドルクラス、ワーキングクラスの生活様式や暮らしぶりを描いた本があればとりあえず読んでみる。という活動をしており、この本もその一環として読んでいる。ちなみに体感だが2010年代以降に書かれた本にはほぼ間違いなくダウントン・アビーについての記述があり、このコンテンツの世界的ヒットは文字通りだったのだとほくそ笑んでいる。

 

最近読んでいるのはこれ。

www.hakusuisha.co.jp

 

18世紀〜20世紀に出版された小説や調査や回顧録、当時を舞台にした映画、ドラマ、舞台作品から階下に暮らす、暮らしぶりや、階上の人々との関わり方、職種などを明らかにしていく新書。もちろんダいさかかウントあン・アビーについての記述もあってニコニコした。合間合間に挟まれる当時の風刺画の挿絵もユーモラスで、とてもおもしろい。

とてつもなく引用が多く(それだけ当時の人々の生活や娯楽作品には使用人の存在は身近だったのだ)名前は聞いたことはあるけれど……という作品も、該当箇所があればネタバレに構わず引用(念の為ワンクッションおいてくれる)されており、ミセスハリスもその一つだった。

ネタバレに配慮する、というより読んでいる前提、もしくは物語の大筋より―主人公がチャーウーマンという設定がイギリスには馴染みのある職業として受け入れられている―独特の共通認識があった時代背景を説明するための装着として一つの作品をネタバレしている。という贅沢さにグっと来た。同時に、この本を読む層にとっては当たり前の教養という事実に(なにせ日本語訳が刊行されたのは1967年)無知を恥じた。

 

 

私がインターネットで好んで読む文章には、さりげなく、でもインパクトのある形であらゆる配慮が配られている。この記事は(というか読むことができている時点で社会の特権を享受しているのだが)大人や未成年や性差や収入や学歴や居住区など関係なく、記事をきっかけに不快に感じる人や一定の差別が少なくなるよう、それでいて直接的にそう感じさせないオチャラケた文体。

料理のレシピには感覚で!とか、なければ〇〇みたいなもので代用できます!と書かれ、外でやってみた記事では撮影許可をとった様子が。旅記事で数行後に目的地に到着しているが、実際はえげつない準備をしないとたどり着けない場所だったりする。Twitterでバズったツイートには投稿者による解説リプライが続き、それでも「教えたがり」な通りすがりの一般人たちが好き勝手に「助言」していく。

 

後半は単に私の性格が悪いだけだね。

 

つまりは、本というのは基本的に誰でも読めるのではなく、本を手に取る対象を絞って描かれているからこそ、読者側の都合を一切無視し、作者が己の伝えたいことを最優先にできる。商業本を刊行するまでに多くの人とお金が動くので、好き勝手に書く文章も間口を広く、それでいて対象への愛情と熱量をふんだんにぶつけていなければならないが。

作者の情熱が作者、編集、編集長、校閲、その他多くの人のお眼鏡にかなった精鋭中の、精鋭なのだからそりゃ面白いはずだわ。(もちろん、中には解釈違いや文体が気に食わない、という理由で読者である私のお眼鏡に叶わなかった本もある。山ほどある。)

常々噛み締めているけれど、デイリーポータルZやオモコロが好きなのは、その愛情と熱量を生(き)で感じることが出来るからだ。よく知らないジャンルでもなんだか面白そうなことをしているね……と読み進めることができ、後日何らかの機会で「あ!!あの時読んだ…!!!」と脳の点と点がつながって線になる感覚。好きなジャンルだったり興味のある事柄の記事だと読み勧めながら「やっぱり???あなたもそう感じるのね!!!あ!!!そこはそういう価値観なんだ!!!」と新しい視点ゆえの刺激を感じることが出来る。

で、本はその究極体。煮凝りなのよ。私が好んで読む本が、何かを研究したり日々を描いたり、文芸小説なこともあるけれど、作者の偏愛が詰め込まれたもの。それが一冊にまとまっている!!!

 

 

夜がふけるのも構わず布団に入って読み耽る。読書の楽しさを今、改めて感じている。

 

追記:文芸では柚木麻子さんの本がマイブームです。あなたのためじゃない、BUTTER、らんたん、ときて、今オールノットを読んでいます。

 

 

追記2:テスも思わぬネタバレを食らったけれど、そこまで動揺しなかった。あの…ロマンチック映像と豪華な衣装な映画版が有名だけれも、淡々とあらすじを羅列された文章を読むと、そうなの?!?と驚いた。エンジェルのダブル・スタンダードな価値観に現代女は憤慨よ……。