映画を見ながら抱いた雑感
- 現代(6期鬼太郎の世界線)から過去への展開がスムーズ
- というかシーンとシーンの間の演出が洒落ている
- 時貞翁、製薬会社、という言い回しが犬神家の一族みたい
- 煙草をそこら辺で吸いまくっているので空気が煙っている画があの匂いすら彷彿させる。仕事を思い出させるな!
- 雪国しかり千と千尋の神隠ししかり、トンネルを抜けた先の異世界(日常と非日常の境界線としてのトンネル)
- 水木のアクセント、水着と一緒なんだ
- 沙代〜東京というハイカラな土地からやってきた水木に憧れを尊敬を抱いて好意を抱いているの、美しい…。
- 葬儀の前日だよね?!今更ながら、ネクタイ赤くて良かったんかい?
- 白塗りを塗りたくつまた成人男性時麿の異様さ…お歯黒もちゃんと描いている。
- 浴衣の衣擦れのおと、タバコに付いた火が空気をまとって燃える音、雨に濡れそぼったゲゲ郎の肩、柱時計の秒針を刻む音(おじいさんの家にあった時計とめちゃくちゃ似ている)
- 水木も強いやん……。スーツで戦う男性を見るともれなく平賀=キートン・太一を思い出してしまう癖なんですが、あっちはSASのサバイバル教官っていう筋金入りのプロですからね。裏鬼道の使い手をのしたんだよ水木は。
- 水木の体つきが成人男性として写実的で好感を持てる。等身が高くなく、肌も浅黒く、がっしりした体つき。
- お、M資金のことか?
- ウイスキーのご相伴に預かる水木。まるで茶道でお茶をいただくように丁寧に飲んでいる。接待慣れしているな〜〜〜。
- あ、Mって血液製剤の原液のことか
- 小舟をボードではなく櫓がひとつの和船ってところがいい
- 禁忌の小島に着いて道なき道を歩く水木の荒い息遣いとつばを飲み込む演技がうますぎ。わかる。山登っているとこうなるもんね。
- 地下でつながっている鍾乳洞……八つ墓村かよ!!!鎧兜も八つ墓村っぽい。
- 間接キス!!!!!!!!!!!!はい!!!!ここ!!!!これ朝チュンですね!!!!!!!!
- 裏鬼道とのアクションシーンで線が細くなってヌルヌル動いているの最高
- お前たちは大義のために死ぬるのだ。
- 行きの電車の中で少女が抱いていた人形が捨てられている…あの子も工場へ
- ひゃーーーーーつ!!!!!水木かっこよすぎ💞💞💞💞💞💞💞ライフルで斧を仕留めるなんてなんてヒーローなの……みりんのイーサンとベンジーかよ……
- 龍賀一族がみんな目玉を損壊させられて死んでいるのは目玉のおやじと関係しているのか、それとも沙代が「私を見ているのではなく龍賀の女として見られていた目」を損壊することで恨みを晴らしているのか……???
- 相棒だって!!!!!!ねえ!!!!!ねえ!!!!!聞いた??????男性同士の関係性の中で最上級の賛辞である相棒ですよ!!!!!!!!!!もうー!!!!!!!!そんな!!!!!!!!好き!!!!!!!!(唐突な告白)
- ってかさーーー!!!血にまみれた水木の、乾いた血と鮮血が混ざった背広の描写が現実感つよい
- 赤ん坊の泣き声=未来によって、血を吸われ続けていた幽霊族の仲間たち=過去の思いが集ってちゃんちゃんこが生まれた……なんて美しく完成された後付け設定なんだ……。やばい……。私はゲゲゲの鬼太郎という一大コンテンツの根幹に関わる大変な瞬間を見届けようとしているのか……。
- あー!!!!!!友って!!!!!!しかも今まで左目が隠れていた目玉がゲゲ郎が新たな依代になると決めた瞬間期ちらっと見えるの、エモーショナル良き……😭😭😭
- あっー!!!!ゲゲゲ=沢城みゆき=鬼太郎さん!!!!!!!!美声……ヒンッ
- あ!そういえばおったな!!!記者!!!!
- そうだな!!!1時間45分の長い物語だもんな!!!
- か、髪が白くなってるし、そして木内秀信さんだったの?!?!ま!?!?あ!!!まじ?!?!ドクター天馬じゃん!!!!!(忍足っていうよりテンマボイスだった)なんだよ……背広を着て活動するタイプの主人公ってマスターキートンかよ……って自分の癖に引いていたけれど、これ浦沢直樹作品じゃん!!!!え、つまりゲゲゲの謎はMONSTERとマスターキートンだっ……た……ってこと?!?!
- あーーーーっ!!!ここで墓場鬼太郎につながるってことね!!!そしてわたしが散々TLで受動喫煙した二次創作が始まるってことね!!!!!
総括
原作へのリスペクトと時代設定と倫理観の濃度がちょうどいい塩梅に令和ナイズされていて最高の映画だった!!
原作へのリスペクト
これはゲゲゲの鬼太郎を始めとする鬼太郎コンテンツと水木しげる御大への敬愛にあふれているなーと素人の私が見ても感心した。アニメ6期鬼太郎の前日譚、とうより、5%は作中時間内に起きた出来事で残り95%のメインストーリーは目玉のおやじが記者に語って聞かせた話。という構成が見事。ゲゲゲの鬼太郎初心者から、貸本時代の作品を網羅しているであろう玄人まで唸らせる、これ一つだけ見ても、鬼太郎シリーズを追いかけていても、そして過去に鬼太郎に触れたことがある人でも全員が引き込まれるストーリーだった。
水木が南方戦線に従軍していた経験が現在はPTSDを患っていたり、ねずみ男(彼を象徴する要素としての不潔もなくなっていなかった)もいるし、子守のおばあさんが教えてくれた妖怪の存在というミームだったり、なにより今作のラスボスはもちろん妖怪なんだけれど、妖怪を何かしらの怨念によって生まれた禍々しい存在ではなく「そこら辺」に居るものと扱っていて良かった。水木が妖怪を目にし始めた=我々が妖怪の存在を認知始める以前から、彼らは居たんだよね。狂骨みたいなラスボスもいれば、河童みたいに助けてくれる妖怪もいる。そしてただ居る妖怪も。妖怪の描き方を否定もしないし肯定もしないのがすごくゲゲゲらしいなと思いました!!!
ワンシーンだけだけれど、座敷牢の荷物の影から二匹(妖怪の単位は匹でいいのか)顔をのぞかせている奴ら。小学生の頃に読んだ水木しげるの妖怪図鑑に載っていたようなッチで、お、御大〜〜〜〜〜〜〜!!!!と懐かしさに咽びそうになった。
時代設定
戦後の日本の空気感そのままパッケージングしたんか????ってくらいの絵面。1940年代~1950年代の日本を舞台にした映像作品やそのころに撮られた映画も好きだけれど、ここまで再現されているのは初めて。よく引き合いに出されているあろう横溝正史作品。あれもね、映像は大分ファンタジーだらかね!!そんな美しくないだろう!!!映像が取られた70年代80年代のファッションや倫理観が丸見えだから!!
他作品とラベルのは違うけれど最近んゴジラマイナス1を見たのね。あれも似たような時代設定だし。あれはやっぱり美しすぎた。どれだけエイジングを施しても演じている役者の演技が見事でもアカデミーをとった視覚効果が抜群でも、最新作は否めなかった。
過剰なまでに感じられる水木の喫煙。ゲゲ郎を座敷牢に閉じ込めた瞬間にそこら辺から灰皿を引っ張ってきて(あの銀色のペラペラのやつ!!あったあった!!)吸い始めたときは、ッパネ~~~!!!と感心したわ。たばこの煙の描写も「喫煙キャラ」ではなく喫煙が日常で身近だららこその当然の描写で良かった。
水木が食しているご飯(お膳に乗っている)龍賀家の大広間の金箔の光、ふすまが続く座敷、平安貴族リスペクト(少なくとも龍賀一族はそのころから活躍していた、ということ?)な時代錯誤な化粧、秒針を刻む柱時計の振り子、櫓でこぐタイプの和船、浴衣の帯をほどく衣擦れの音(スケベな作品でよく出てくる描写だけれど効果音として初めて聞いたかも)復員した水木の左目に巻いた包帯ににじむ血、あと地味だけれど帝国血液銀行の社長が飼っているのが出目金ってのもいいね~~。悪そうな男が愛玩動物を飼うってのは古今東西のあるあるだから。犬でも猫でも庭の池の鯉でもなく金魚という選択。
「銀座のパーラーに入ったことがおありで?」(略)「クリームソーダを喫しました」
このね!!水木の「喫しました」ってのが当時の言葉遣いと水木の配慮と尊敬語が咄嗟に出てくる彼の太鼓持ちとしての優秀さがよく出ているわ。クリームソーダは小夜の口から、妻との幸せな思い出を語るゲゲ郎の口から語られるけれど、それぞれ都会と自由、進歩的な思想と友和を象徴する作中でも数少ないポジティブな象徴だった。
飲んだくれている丙江の部屋に散乱するのがお銚子だったり、因習村に不釣り合いな洋館だったり、全シーン一時停止して指差し棒で持論を述べたい。それくらい全編通して昭和の空気感をアニメの力で再現するという意気込みが伝わってきた。
倫理観、というより登場人物たちの思考と性格
キャラクターが全員どこか狂っているのがいい。
ゲゲ郎→幽霊族なので人間の倫理観で動いていない。妻の存在によって大分人間の価値観に近づいたけれどそれでも作中最強。だからこそ水木と言う男を信頼し相棒と言わしめ遂には友と呼んだことが生きてくる(慟哭)
水木→戦争帰りの男。明らかにPTSDを患っている。作中唯一の人道的な倫理観を持ち合わせているけれど、明らかに血液銀行の一写真にしておくにはオーバースペックな戦闘力を誇る。二次創作でゲゲ郎と二人で幸せに子育てをしている描写が山のように溢れているのも納得のラストだった。
(関係ないけれど、血のつながらない男性同士、もしくは恋愛関係とは限らない男性同士が子供を育てるというのは洋画界隈ではよくある設定だけれど日本産の作品で二次創作とは言えここまで描写されるのは、ついにここまで来たか……とΩバースが日本になじんだかのような感慨深さがあるよね)
沙代→龍賀一族の慰み者として生を終えるはずだったが水木と出会ったことで外の世界へ一歩踏み出す。作中ラスボスその①。水木と沙代が共に生きる世界線もありえたのかもしれないけれど、現実的に考えて生まれて村から出たことがない旧家の大金持ち令嬢が東京でサラリーマンの男と暮らせるわけないんだよな…でもな…見て見たいんだよ…そんな未来を……。
時弥→作中最大の被害者
時麿→沙代に迫る描写の気色悪さ。こいつは殺されてもいい。
孝三→名前に時の字が入っていないことから、時麿ほど歓迎されて生まれてこなかったのかな。そして孝三の前に死別した第二子が存在していそう。あとCV中井和哉だったの!??!?!?!??!まじ!??!?!??!
乙米→倫理観欠如女
克典→俗物的で成り上がりの娘婿。水木を気に入ったのも彼の野心家な部分が自分と似ているからではないか。乙米が沙代に命じた鬼畜の所業を知っ知ってか知らずか沙代を嫁にくれてやってもいいと発言しているので、沙代にとっては親公認の逃避行だったのではないかな~~~。当時の価値観から娘は大事な子供ではなく自分の駒としてあつかっていそうなので、沙代を自分のお気に入りの男に嫁がせるのは克典なりの水木への恩賜かも。
長田→CV石田彰糸目長髪体術幻術忠誠心MAXな男。こんなの「癖」になるじゃん!!!!これを見た少女がなにかしらに目覚める奴じゃん!!!!!乙米との関係性は姫と騎士のようだけれど、二人の間は肉体関係もあってもいいと思います。